離婚の慰謝料について

 離婚の慰謝料は、どのような場合に請求できるのでしょうか。
 慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償です(財産分与の一部として支払われるときもありますが)。
 よって、不法行為があり、その結果、精神的損害が発生していなければ認められません。また、裁判では、慰謝料を請求する人が、不貞、暴力などがあったことや、それにより自分に精神的損害が生じたことを主張、立証する必要があります。

不貞
 相手方が認めないときには、証拠が必要です。裁判では、メール、手紙、興信所の報告書が証拠として提出されることが多いです。
 裁判で認められる金額は、300万円を超えることは余りありません。
暴力
 これについても、相手が認めない場合には、証拠が必要です。
 慰謝料の請求をお考えの方は、診断書や写真を撮っておきましょう。
 ただ、暴力による慰謝料についても、裁判所で認められる金額は200万円~300万円程度にとどまるケースが多いです。
その他
その他、離婚の慰謝料請求が問題となる場合として、次のような場合があります。

悪意の遺棄
 ・妻が病気して夫が遺棄
 ・夫が突然家出をして、別居期間中婚姻費用を支払わない
 ・夫が妻の入院後、5年以上入院費・生活費を全く支払わない

性交渉の不存在
 ・最初から、夫が理由の説明もなく性交渉を拒否
 ・妻が、結婚後、1回も性交渉に応じなかった。

扶助・協力義務違反や自己中心的行為
 ・夫が収入を家に入れず、妻が3人の子供を養育
 ・執拗な難詰と暴力

離婚の慰謝料の金額

 では、このように慰謝料を請求できるような事情がある場合、どれくらいの金額が認められるのでしょうか。
  慰謝料の金額を決めるにあたって、考慮される事情についての説明です。

離婚の慰謝料の金額を決めるにあたって重視されることは?

慰謝料の金額を決めるにあたっては、次の事情が重視されて決められます。

 1. 有責性
 2. 婚姻期間
 3. 相手方の資力

 ただ、ほとんどの場合が200万円~300万円止まりです。中には、1000万円を超える高額な慰謝料が認められているものもありますが、そのようなケースは、夫が会社を経営していて相当の収入があり、婚姻期間もかなり長いケースです。

離婚の慰謝料を決めるにあたり、考慮されること

 離婚の慰謝料は、次のような事情を考慮して決められます。

 1. 有責性、背信性の程度(何度も不貞行為があった、長期間の不貞行為、ひどい暴力など。どれくらい悪いかということ。)
 2. 精神的苦痛や肉体的苦痛の程度(うつ病になった、暴力により重いけがを負ったなど)
 3. 婚姻期間(婚姻期間が長いほど高い)
 4. 未成年の子供の存否(未成年の子がいる方が高い)  
 5. 有責配偶者(悪いことをした配偶者)の資力、社会的地位、支払い能力(有責配偶者に、資力がある方が、社会的地位が高い方が、支払い能力がある方が高い)
 6. 無責配偶者(悪いことをされた被害者のこと)の資力(無責配偶者の資力がないほど高い)
 7. 財産分与による経済的充足の有無(財産分与で充分もらっているか)

離婚の慰謝料請求が認められない場合

 相手方が浮気をして離婚することになっても、必ず慰謝料の請求が認められるわけではありません。
 不貞行為等の有責行為があっても慰謝料請求が認められない場合とは、どのような場合かについてのご説明です。

立証できない場合
裁判では、請求する側に立証責任がありますので、相手が認めず、証拠もないと認められません。
有責性の程度
慰謝料を支払わせる程度の有責性がないことにより、慰謝料請求が認められないこともあります。
婚姻関係破綻の責任
婚姻関係破綻の責任が同等か、主に請求者側にあるときには、慰謝料請求が認められないこともあります。
(例)
・夫の行為が破たんの一因になっているが、妻の発言にも問題があった。
・夫は暴力は振るったが、妻には不貞があった。
・妻には宗教活動の行き過ぎがあったが、夫も暴力を振るっていた。
違法性がない場合
夫がかなり昔に不貞行為を働いたが、その後の夫婦生活の維持により違法性が消滅した場合など。
損害がない場合
不貞の相手方から受領している慰謝料により、精神的損害は填補されている場合など。
因果関係がない場合
相手の不貞行為より前に婚姻関係は破綻していたので、不貞行為はあったものの、不貞行為と破綻との間の因果関係はない場合など。